月が青く染まる夜に


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年明け最初の週は、まだ空気が少しだけ静かだった。
浮ついたお正月明けの気分を引きずっているような。

それでも、いつも通りに日常が戻ってくる。

総務部インフラ整備課。
私は基本、社内の設備管理や契約書類、保守計画の調整が仕事。
トラブルや大きな工事のときだけ現場に出る。

そして────うちには外部の協力会社がたくさんある。
お互いがお互いなくして、成立しないほどに支え合う協力会社だ。


その中でも桜華テックという会社は、中でも連携を密にとるところだった。

高圧受電設備や非常用発電機の保守を請け負っている会社で、定期点検や改修工事のときに来る。

常駐ではない。
必要なときだけ、来る。

だから、自動ドアが開いて見慣れた女性が入ってくると、「あ、今日は何かあるんだ」と分かる。


「失礼します」と明るい声で入ってきた女性。
耳下くらいの長さの髪をハーフアップでクリップでとめた、パンツスーツのよく似合う綺麗な人。

桜華テックといえば彼女、というくらいしょっちゅう見かける。


片桐彩(かたぎり あや)さんは、ここ最近はずっと担当してくれているのか、私でさえフルネームを覚えてしまった。

首から下げた入館証。来客用のストラップ。
社員証とは色が違う。

「おはようございます」

自然に挨拶するけれど、席は来客スペース寄りだ。

社内メールも持っていないし、内線も外線経由。
ちゃんと“外部の人”。

そう思っていたけれど、今日は気になることがあった。