無難なワイシャツ、無難なネイビーの細身のスラックス、普通の革靴、黒いコート。
ビジネスリュックにぶら下がるそれだけが異質だが、仕事内容を考えると信号機が好きでつけているだけ、というのが一番濃厚である。
沈黙しかないエレベーター。
私だけが彼の後ろ姿を上から下まで眺めてしまった。
エレベーターが1階ロビーに着き、先に私を降ろしてくれた彼は、追い越しざまに
「お疲れ様でした」
と淡々と声をかけてきた。
「あ、うん、お疲れ様」
この私の声は果たして彼に聞こえたのか。
それくらい歩調はまったく合わず、彼は足早に私から距離を取るようにさっさといなくなってしまった。
チカッと彼のキーホルダーが赤に光ったような気がした。
……まあ、分かってはいたことだし。
今までなんの接点もなかった。
彼にとっても、私の存在はそれこそ、箸にも棒にもかからないものであることの証明みたいだ。
しかし、さっさと歩いていった彼が先の横断歩道で赤信号で立ち止まっていた。
ずーっと、ずーっと、歩行者信号を見上げている。
行き来する車を見やったと思えば、今度は車道の信号機をじっと見つめていた。
追いついてしまった私は、半歩後ろで彼を観察する。
この人、信号機しか見えてなさそう。
赤や緑に横顔が照らされるたび、なんとなく眩しそうに目を細めているようにさえ見えた。
ビジネスリュックにぶら下がるそれだけが異質だが、仕事内容を考えると信号機が好きでつけているだけ、というのが一番濃厚である。
沈黙しかないエレベーター。
私だけが彼の後ろ姿を上から下まで眺めてしまった。
エレベーターが1階ロビーに着き、先に私を降ろしてくれた彼は、追い越しざまに
「お疲れ様でした」
と淡々と声をかけてきた。
「あ、うん、お疲れ様」
この私の声は果たして彼に聞こえたのか。
それくらい歩調はまったく合わず、彼は足早に私から距離を取るようにさっさといなくなってしまった。
チカッと彼のキーホルダーが赤に光ったような気がした。
……まあ、分かってはいたことだし。
今までなんの接点もなかった。
彼にとっても、私の存在はそれこそ、箸にも棒にもかからないものであることの証明みたいだ。
しかし、さっさと歩いていった彼が先の横断歩道で赤信号で立ち止まっていた。
ずーっと、ずーっと、歩行者信号を見上げている。
行き来する車を見やったと思えば、今度は車道の信号機をじっと見つめていた。
追いついてしまった私は、半歩後ろで彼を観察する。
この人、信号機しか見えてなさそう。
赤や緑に横顔が照らされるたび、なんとなく眩しそうに目を細めているようにさえ見えた。



