月が青く染まる夜に

でも、と続ける。
「停電範囲どれくらいだろうって、考えちゃうんですよね。系統図が頭に浮かぶんです」

ぞろぞろと帰る観客の列に並んで、外の冷たい空気が入り込んでくる。

スクリーンの中で好き放題に爆走していた数え切れないほどの車両。
なにも考えずに観ていたせいか、大破する瞬間よりも、アクセルをベタ踏みしてほくそ笑むヒゲ面の主人公の顔が思い出されてしまった。


どんな時も迅和くんは真面目だ。

「迅和くんってさ、もう職業病だよね」

思ったことを口にしただけなのに、あちらの方が不服そうだった。

「紗菜さんは考えませんでしたか?絶対“予算どこ持ちだろ”って思ったでしょう」

「思ってないよ!考える余裕ないもん」

「年度末だったら最悪ですね」

「……補正組み直し、だねー」

ふたりで、ほとんど同時に小さく笑う。

スクリーンでは、主人公が奇跡的に無傷で車から出てきたのだから、それもまた違う意味で面白ポイントでもあった。