月が青く染まる夜に

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館内が暗くなり、非常口の緑だけがぽつんと浮かび上がった。


どんな映画を見るのかなかなか決まらず、だからと言ってあの可愛らしいお店に長居するのは迅和くんがギブアップ。

というわけで、直接映画館に出向いて、“絶賛上映中”と書いてある大きなポスターを見て、これにしよう!と選んだ洋画にした。


暗転すると、急に隣の気配が濃くなった気がした。

スクリーンが光った瞬間、爆音が身体の芯まで響いて、思わず背筋を伸ばす。


私たちが選んだのは────カーアクション満載の、爆走物語。
洋画なので、もちろん迫力も満点。

エンジンの唸りとタイヤがアスファルトを削る音が重なり合い、映画は容赦なく一気に走り出した。


肘掛けにそっと手を置く。
置いたつもりなのに、ほんの少し彼の方へ寄っている気がして、自分で自分の手の位置を意識してしまう。

暗闇のせいなのか、隣にいる迅和の体温まで感じられそうで、落ち着かない。

画面の中では車が横滑りし、寸前で衝突をかわす。
思わず前のめりになった私の口から、小さく声が漏れた。

「うわぁ…」

するとすぐ、耳元に低い声が落ちてくる。

「大丈夫ですか?」

距離が近い。暗いと、こんなにも近く感じるんだ。

「うん、平気」

ちゃんと平静に言えたか分からない。
自分の声が少しだけ浮ついているのが分かる。