月が青く染まる夜に

音が流れ込んでくる。
思っていたより静かな曲。
流行りの音楽とも違う、たぶん私があまり聴かないジャンルの洋楽。

ギターの音が、川の水音と混ざる。

「…意外だな」

ぽつりと言うと、迅和くんが不思議そうな顔をした。

「なにがですか?」

「もっと、ロックなの聴いてるかと」

「だいぶ偏見ですよ」

肩が少し触れて、すぐ離れる。
沈黙が続くけれど、音楽があるせいで気まずくない。


ふと視線が下に落ちる。
ボディバッグの横で揺れる、信号機。

「それ」と、おもむろに私が指さす。

「いつもと違うよね。リュックについてるやつとは、また別なの?」

彼が自分のバッグを見て、小さく笑う。

「ああ、これ。たくさん種類あるんです」

「そんなに?」

「ガチャガチャでコンプしたって言ったじゃないですか。僕、保存用にもコンプしたので、二個ずつ全種類あります」

「オタク…いや、愛だね〜」

「推し活って言ってもらえます?」

ふふふ、と肩を震わせていると、迅和くんは立ち止まってキラキラした目でキーホルダーをつまんだ。指先で弾くと、カチ、と小さな音。

「すごくないですか?信号の色、操作できるんです」

「ガチャガチャも進化してるねぇ」

小さくても、精密。
小さくても、彼の心を掴んでいる証拠。
だって楽しそう。