月が青く染まる夜に

風がまた強く吹いて、お互いのマフラーが揺れる。
迅和くんは白い息を吐きながら空を見上げた。

「今日、来てくれないかと思いました」

その声は軽いのに、ほんの少しだけ本音が混ざっている気がした。

「そっちこそ。時間指定もないし、場所だって霜瀬川ってだけだったし」

負けじと返すが、彼は笑った。

「でも、来てくれたじゃないですか」

一瞬の静寂。
川の水音だけが続く。


「……歩きます?」
「散歩、でしょ?」

ほぼ同時。少しだけ笑いがこぼれた。

風は強いけど、思ったより寒くない。


風に押されるみたいに、二人で川沿いを歩き出した。
横並びで、近すぎず、遠すぎず。

コートの袖が触れるか触れないかの距離。
私たちから自然とこぼれる白い息だけが、空中で混ざる。


迅和くんは外したイヤホンを指に絡めたまま、少し考えるようにしてから片方を差し出してきた。

「散歩用プレイリストです」

「そんなのあるの?」

「ここに来る途中つくりました」

差し出されたイヤホンを見て、受け取るか、迷う。

でも断る理由もなくて、私は小さく「じゃあ」と言って耳にかけた。