月が青く染まる夜に

『風に飛ばされない格好してきてくださいね?』


先日の彼の声が頭の中で再生される。
厚着して、しっかり防寒していかないと。


勢いよくクローゼットを開けた。

ニットは可愛いけど風に負けそう。

ロングスカートも揺れすぎて危険。ワンピースは論外。


結局、パンツスタイル。
安定第一。重心低め。
ウールの厚手のコートを羽織って鏡を見る。
マフラーも生地が分厚めのものを選んで巻いてみた。

「ミシュラン…」

呆然としていそいそといったん脱ぐ。
結局、裏地がしっかりしているベージュのウールのブルゾンにした。
川沿いを歩くのだから、動きやすさ重視。

ふと手を止める。

────来なかったらどうしよう。


そのときは、ただの散歩だ。休日の健康的な朝活だ。
切り替えてそういうことにする。
すっと息を吸って、大きく吐く。深呼吸。


まだ温もりの残っているベッドで寝ているちくわに
「朝活、行ってきます」と声をかけた。


玄関のドアを開ける。

風が思った以上に強くて、
「寒っ」
と、口が滑ってしまった。
言葉と一緒に白い息が舞い上がる。

ドアを静かに閉めて、鍵もかけた。
白い息が、まだ消えないうちに、歩き出す。