月が青く染まる夜に

隣に自然に並んだ気配があり、見上げると迅和くんがいた。
歩くたびに、じゃらり、とキーホルダーが鳴る。
その金属音は、彼の居場所を教える印みたい。

前後にも同じ会社の人たちはいる。
でも、誰もこちらなんて見ていない。


駅まで歩きながら、信号機の明かりを追う横顔を見やる。
私はたぶんそこにはいないんだろうな。

────と、思っていたのに、ふと迅和くんの思考が急にこちらに向いたのか、思い出したようにこちらを振り返った。

「紗菜さん、風、強いですけど大丈夫ですか?」

単純な、寒さの心配。
心の中で吹き出しそうになるのをおさえて、私もいつも通りの温度で答える。

「分かってるよ。さっきから全部持っていかれそうだもん」

言いながら、マフラーをぐるぐる巻き直す。
まるで海苔巻きになった気分だった。

彼はちらりと私を見て、ほんの少しだけ口元を緩める。

「そのまま転がっていきそうですね」

「転がりません! 重心は低めなの!」

自分で言ってから、なに張り合ってるんだろうと思って笑ってしまった。
彼も、笑うともつかない息だけの笑いを落とす。白い息がふわりと浮かぶ。