月が青く染まる夜に

その彼らを飛び越えて、迅和くんの声が聞こえた。

「待ち受けも、ちくわですか?」

「え?」

ちくわへの興味なんてないんだと思って内心ショックだった気持ちが、一気に上向きに変わる。

「うん!うん!ちくわだよ!」

「今度ぜひ見せてください。今はたぶん────」

彼の視線が、ガガ様で盛り上がる二人にスライドする。

『この二人がいるから、やめておこう』

そんな無言の言葉を投げかけられた気がした。
迅和くんは少しだけ微笑んでいて、なにかのサインにも思えた。

…そうだね、今じゃない。


頬杖をついて、今だけのざわめきを味わった。



••┈┈┈┈••

店を出た瞬間、冷気がざぶんと押し寄せてきた。


「寒っ!」

思わず声が出ると同時に、前を歩く誰かの背中が揺れた。笑っている。
私もつられて、少しだけ肩をすくめる。

人波が二つに分かれ、改札へ向かう列が細く伸びていく。
二次会へ行く組と、帰る組に分かれた。
私はこのまま帰宅コースだ。