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忘年会は、駅前の大きめの居酒屋だった。
入口には、『本日貸切』の貼り紙。
暖簾をくぐった瞬間、温かい空気と焼き物の匂いが一気に押し寄せてきて、冬の冷たさが肩から剥がれ落ちる。
壁には「今年もお疲れさまでした!」の大きな紙が貼られ、座敷の天井からは少しだけ歪んだ提灯がぶら下がっている。
長い座卓がいくつも並び、すでに営業課や工務課など人数の多い部署の人たちがぎゅうぎゅう詰めに座っていた。
すぐに「紗菜ちゃん!」と呼ぶ声。真奈美さんだ。
席はとっておいたよー、と案内されるまま、一番端っこに腰を下ろす。
ほぼ角。もはや地図の外縁。
「ごめんねー、こんな隅で。もうさ、席足りなくない?一昨年みたいにホテルの立食パーティーがよかったー」
真奈美さんも困り顔だった。
忘年会は毎年、部署横断で大規模に開かれる。
それはいいとして、いつも人数の多さにうんざりするし、ガヤガヤしすぎて話し声もよく聞こえないほどだ。
中小企業とあれど、意外と集合するととんでもない。
正面の席が遠すぎて、隣に真奈美さんがいることが救いかも。
ちらりと反対側の端を見ると────
やっぱりいた。迅和くん。
彼もまた、端っこ。
まるでテーブルの両端で引っ張り合う綱みたいに、私たちは対角線上に配置されていた。
ちょっと笑いそうになる。
この距離感が、逆に“らしい”。



