しばらく経った頃、足音が聞こえてきて迅和くんが顔を出した。
ちょっと急いだような顔で、息を切らして。
「机にコーヒー置いてるよ」
のほほんと声をかけると、彼はおもむろに手にぶら下げていたビニール袋からなにかを取り出した。
それを私に渡すのではなく、私のデスクに置く。
透明なフタ付きの、イチゴが乗った二個入りのショートケーキだった。
「コンビニので、すみません」
これを買いに行ってくれていたのか、わざわざ下のコンビニへ。
……優しい。
私が呆然としていると、彼は自分のデスクからコーヒーとキャスターつきのイスを持ってきて、目の前に座った。
コピー機を通り越してこちら側へ来ることなんて、稀だ。
「お皿がないので、一緒に食べましょう」
「……うん」
使い捨てのフォークを差し出され、うなずく。
ここまで近い距離で向き合うのは、たぶん初めてだ。
緊張するな、緊張するな。意識しちゃダメ。顔に出る。
「…なにか、言いたいことないの?」
口から出た言葉は、一ミリも可愛くない。
でも、声が少し震えてしまった。
彼は眉を寄せ、考えるように私を見つめる。
視線が逸れることはない。
その目の奥に、ほんのわずかに動揺が見え隠れする。
私は息を少し詰めて、手のひらを膝の上でぎゅっと握り締める。
頑張って目を見つめ返すと、彼は「あぁ」と思い出したように、口元だけを柔らかく緩めた。
「メリークリスマス」
やさしい声、やさしい響き。
その存在にホッとして、なんとなく素直になれた。
「迅和くんも、お疲れ様でした。…ありがとう。街を守ってくれて」
小さく微笑む私に、彼の目尻が少し下がる。
瞬間、息をのむほどの愛おしさが胸をかすめた。
胸の奥がふわりと浮かぶようで、夜の静けさの中に、まだ何かが動き出しそうな気配が残っていた────。
ちょっと急いだような顔で、息を切らして。
「机にコーヒー置いてるよ」
のほほんと声をかけると、彼はおもむろに手にぶら下げていたビニール袋からなにかを取り出した。
それを私に渡すのではなく、私のデスクに置く。
透明なフタ付きの、イチゴが乗った二個入りのショートケーキだった。
「コンビニので、すみません」
これを買いに行ってくれていたのか、わざわざ下のコンビニへ。
……優しい。
私が呆然としていると、彼は自分のデスクからコーヒーとキャスターつきのイスを持ってきて、目の前に座った。
コピー機を通り越してこちら側へ来ることなんて、稀だ。
「お皿がないので、一緒に食べましょう」
「……うん」
使い捨てのフォークを差し出され、うなずく。
ここまで近い距離で向き合うのは、たぶん初めてだ。
緊張するな、緊張するな。意識しちゃダメ。顔に出る。
「…なにか、言いたいことないの?」
口から出た言葉は、一ミリも可愛くない。
でも、声が少し震えてしまった。
彼は眉を寄せ、考えるように私を見つめる。
視線が逸れることはない。
その目の奥に、ほんのわずかに動揺が見え隠れする。
私は息を少し詰めて、手のひらを膝の上でぎゅっと握り締める。
頑張って目を見つめ返すと、彼は「あぁ」と思い出したように、口元だけを柔らかく緩めた。
「メリークリスマス」
やさしい声、やさしい響き。
その存在にホッとして、なんとなく素直になれた。
「迅和くんも、お疲れ様でした。…ありがとう。街を守ってくれて」
小さく微笑む私に、彼の目尻が少し下がる。
瞬間、息をのむほどの愛おしさが胸をかすめた。
胸の奥がふわりと浮かぶようで、夜の静けさの中に、まだ何かが動き出しそうな気配が残っていた────。



