月が青く染まる夜に

「僕にとっての超ロマンチックなイルミネーションは、信号機なんで」

不意に面白すぎる名言を吐いた彼に、私は思わず大笑いしてしまった。

「ねぇー、もうホントに!あははは!迅和くんって時々すごいこと言うよね」

涙が出るくらい笑った。

私があまりにも笑い続けるものだからか、ほんのわずかだけ彼の目元も緩んでいる気がした。


ひとしきり笑ったあと、私は外の寒さを思い出して向き直る。

「コーヒー淹れるね。寒かったでしょ?」

「あ、はい…ありがとうございます」

砂糖なし、ミルクあり。
もう覚えた。

軽い足取りで事務所を出て、給湯室へ向かう。
その中でいつも通りにコーヒーを淹れた。

ひんやりとした廊下に、この給湯室の明かりが漏れる。

紙コップに入れたコーヒーから上がる湯気が、外で吐く白い息みたいだった。


カチ、と電気を消して暗い廊下を進んで事務所へ戻る。

そこには、迅和くんはいなかった。

一瞬、帰った?と思ったものの、ついさっき彼が脱いだ防寒ジャケットもそのままだし、信号機のキーホルダーがついたリュックも、定位置にある。

…トイレ?


コーヒーを彼のデスクに置いて、私は自分の席に座って甘いコーヒーをすすった。