月が青く染まる夜に

“まもなく電車が来ます”というアナウンスと同時につぶやいていた私は、コートの中の服をまさぐる。

右、右の袖。米粒?

すぐに硬い小さなものが手に当たった。
ニットに絡んでいたが、つまみ出すと確かに米粒。


…メッセージでも爪痕を残してくるとは。

電車のライトが眩しくて、少し顔をしかめながらスマホに指を滑らせた。

『どうして気づいた時に言ってくれなかったの?』

すぐ既読になり、そして淡々とした返信。

『コピー機とのおしゃべりに夢中みたいだったので』

なんで、全部彼の方が上手なんだろう。
いつもやり込められる感覚。

悔しくてなにか送ってやろうとしたものの、先にあちらからまた送信されてきた。


『以上業務連絡でした』

『おやすみ』


────業務連絡に、『おやすみ』は使わないのよ。

ぎゅうっとスマホを握りしめた。


電車が止まり、プシューッという音がしてドアが開く。
同時にドアの上部に緑のライトが点灯した。

乗り込む際、じゃらり、という例の音も聞こえた気がして振り向いたけれど、もちろんそこに彼がいるわけもなくて。


空いている席に座って、ふっと息をついた。
窓に映る街灯が、ゆらりとにじむ。


ドアの上部の緑が、朝の非常灯と同じ色に見えた。