月が青く染まる夜に

インスタントコーヒーを淹れて、二人で給湯室の台にもたれかかる。
ブラック派の真奈美さんは、淹れてすぐのコーヒーを何も入れずにフーフーしながらすすっていた。

私はミルクを入れて、砂糖を放り込む。

「おやまあ、なんだか傍目から見ると…」

すぐに切り出してきた真奈美さんの口を、力づくで塞ぐ。

「やめてください。気のせいです」

「ふがふが。えー!絶対ウソ」

「そーやってすぐにいじろうとするんだからー」

どさっと出したスティック砂糖をひとつずつ開けて入れて、を繰り返す。

「じゃあー、私のお昼ご飯の誘いを断ったんだから、今日は飲みに付き合ってよね?」

ほろ苦いコーヒーの香りに包まれながら、真奈美さんがわざとらしく肩を組んできた。
彼女のペースに、もう持ち込まれている。

「明日こそランチ付き合いますから」

「話なら聞いてあげるよ?」

「悩みなんてないですよ」

「ふーん?そうかなぁ?」

「順風満帆です」

ぐるぐるとマドラーでカップをかき混ぜる。
思考回路はぐちゃぐちゃだけど、コピー機が直った時の緑ランプだけはやけに鮮明だった。


「紗菜ちゃん」

「はい」

ぐるぐるかき混ぜながら適当に返事をする。
その手元をのぞき込まれる。

「お砂糖、何本入れた?」

その言葉で我に返る。

「────あれっ?」


台の上に、何本も開けたスティック砂糖の残骸。
これ、無意識に私がやったの?

「だいぶ甘党になったんだねえ。いつもは砂糖もミルクも一個ずつ、でしょ?」

心ここに在らずなのが、先輩のその言葉に集約されていた。