すると、少しずつ聞こえてくる扉の向こうからの金属音。
最近は、じゃら、という金属音を聞くだけで「あ、」と思うようになってしまっていた。
事務所の扉が開くと、やっぱりなって思う。
迅和くんが出社してきた。
扉が開くか開かないかのうちに扉から目を逸らした。
見ていたことを勘づかれたくない。
彼はだるそうな足音を鳴らしながら、ドサッという音と共に自分のデスクに腰を下ろしたであろう。
たいてい朝の彼は、眠そうで、起きたてのよう。足音が物語る。
かき分けないと見えない目が、半分閉じていそうなほど。
少し前に現場で話して以来、たぶん二人でちゃんと会話をしていない。
とはいえ、それは当然のことなのだ。
私が彼の輪郭をちゃんととらえるまでは、これが普通であったのだから。必要最低限の会話だけをする、ただの同僚であり、その存在は曖昧なものだった。
その時、背後から「おはよー」と真奈美さんの声がした。
振り向けば、真奈美さんがコーヒー片手に笑っている。
事務所に来る前に先に給湯室に寄って、コーヒーを淹れてきたらしく、熱々の湯気がたちのぼっていた。
「おはようございます」
「あれ?紗菜ちゃん、今日急いでた?」
「どうしてですか?」
なにも考えずに聞き返すと、首をかしげながら真奈美さんが私の顔をまじまじと見つめてきた。
「うーん、なんか、いつもより幼いっていうか…。メイクしてないような」
「……………」
最近は、じゃら、という金属音を聞くだけで「あ、」と思うようになってしまっていた。
事務所の扉が開くと、やっぱりなって思う。
迅和くんが出社してきた。
扉が開くか開かないかのうちに扉から目を逸らした。
見ていたことを勘づかれたくない。
彼はだるそうな足音を鳴らしながら、ドサッという音と共に自分のデスクに腰を下ろしたであろう。
たいてい朝の彼は、眠そうで、起きたてのよう。足音が物語る。
かき分けないと見えない目が、半分閉じていそうなほど。
少し前に現場で話して以来、たぶん二人でちゃんと会話をしていない。
とはいえ、それは当然のことなのだ。
私が彼の輪郭をちゃんととらえるまでは、これが普通であったのだから。必要最低限の会話だけをする、ただの同僚であり、その存在は曖昧なものだった。
その時、背後から「おはよー」と真奈美さんの声がした。
振り向けば、真奈美さんがコーヒー片手に笑っている。
事務所に来る前に先に給湯室に寄って、コーヒーを淹れてきたらしく、熱々の湯気がたちのぼっていた。
「おはようございます」
「あれ?紗菜ちゃん、今日急いでた?」
「どうしてですか?」
なにも考えずに聞き返すと、首をかしげながら真奈美さんが私の顔をまじまじと見つめてきた。
「うーん、なんか、いつもより幼いっていうか…。メイクしてないような」
「……………」



