最近の朝の冷え込みは一段と深い。
車窓の外で、霜が小さくきらめいているのを、私はぼんやり眺めていた。
朝の事務所は、まだ人の匂いが満ちきっていなかった。
照明はすでに白く輝いているのに、空気だけが薄く冷えている。
扉が開くたびに、外の朝が一瞬だけ入り込み、すぐに追い出されていく。
足早に自席へ向かう途中で、私はふと足を止めた。
天井近くに灯る、緑色。
非常口の誘導灯だ。
いつもそこにあるのに、意識したことなんてほとんどない光。
なのに今朝は妙に目に残った。
静かで、動かなくて、けれど確かに「道」を示している灯り。
まるで、今日のどこかに出口があるみたいに。
私は小さく息を吸い、席に着いた。
キーボードを打つ音だけが、まだ静かな室内に響く。
メールを開き、現場報告を確認し、担当部署へ振り分ける。
前日の仕事の残りで気になることが多々あったので、だいぶ早めに出社したのだ。おかげでまばらな会話だけが聞こえてくる。
体は勝手に動いてくれる、いつもの手順。カーソルを規則的に動かす。
視線だけが勝手に右へ流れた。
迅和くんの席。
まだ黒いリュックはカゴにない。
昨日と同じ書類が、昨日のまま整っている。
いない、と思うと胸のどこかがふわりと浮いた。
安心とも、寂しさともつかない軽さ。
車窓の外で、霜が小さくきらめいているのを、私はぼんやり眺めていた。
朝の事務所は、まだ人の匂いが満ちきっていなかった。
照明はすでに白く輝いているのに、空気だけが薄く冷えている。
扉が開くたびに、外の朝が一瞬だけ入り込み、すぐに追い出されていく。
足早に自席へ向かう途中で、私はふと足を止めた。
天井近くに灯る、緑色。
非常口の誘導灯だ。
いつもそこにあるのに、意識したことなんてほとんどない光。
なのに今朝は妙に目に残った。
静かで、動かなくて、けれど確かに「道」を示している灯り。
まるで、今日のどこかに出口があるみたいに。
私は小さく息を吸い、席に着いた。
キーボードを打つ音だけが、まだ静かな室内に響く。
メールを開き、現場報告を確認し、担当部署へ振り分ける。
前日の仕事の残りで気になることが多々あったので、だいぶ早めに出社したのだ。おかげでまばらな会話だけが聞こえてくる。
体は勝手に動いてくれる、いつもの手順。カーソルを規則的に動かす。
視線だけが勝手に右へ流れた。
迅和くんの席。
まだ黒いリュックはカゴにない。
昨日と同じ書類が、昨日のまま整っている。
いない、と思うと胸のどこかがふわりと浮いた。
安心とも、寂しさともつかない軽さ。



