窓の外が、少しだけ明るい。
冬の白さとは違う、ほんの少し色を含んだ光。
街路樹の枝先はまだ硬いけれど、よく見れば小さな芽がついている。
信号機の赤が、どこかやわらいで見えた。
退勤時間、交差点で寄り添うように並ぶ。
コートはまだ必要。
でも、風はもう刺さらない。
迅和くんが、じゃらりとキーホルダーを鳴らす。
癖みたいな音。
「寒くなくなってきたね」
「うん。ちょっとだけ」
赤から青へ。
どちらからともなく、同じタイミングで一歩踏み出した。
肩が触れる。
でも、離れない。
横断歩道の白が、夕方の光をやわらかく跳ね返す。
春はまだ途中。
私たちも、きっと途中。
それでもいいと思えた。
青に変わるまでの時間さえ、もう、ひとりではないのだから。
信号は、静かに青を灯していた。
𓂃⟡.·おしまい𓂃⟡.·



