月が青く染まる夜に

そうか、とここで思い出した。

いつかの会議室で、彼にしては珍しく少し言い返すみたいに「あのさ、僕だって…」って何かを言いかけていた。

あれはこのことだったのだ。

落ち着いているように見えるだけで、本当は余裕なんてないのかもしれない。
いつも平気なわけじゃないのかもしれない。
ちゃんと私と同じ気持ちなんだと、そう伝えたかったのかもしれない。


「ちくわのタイミングが、僕とは噛み合わないみたいだ」

まだショックを隠せない彼の言葉が、私にはちょっと嬉しい。

ちくわはまだ離れない私と迅和くんの体の間に、力任せに頭からぐりぐりと割って入るように乗ってくる。

小さな、でもとてつもなく大きな白い結界。
 

不謹慎だけど、私は思わず笑ってしまった。

頬の熱はまだ消えない。
でも、嫌じゃない。
ゆっくりだけど、進んだ感触はちゃんとある。

ソファの真ん中には、最後まで白い壁があったけれど。

その向こうで、彼と目が合う。

「次は僕の家に来てくれない?生き物いないから、邪魔されない」

「いいよ。でも、理性は?」

「だから、僕にはないんだって。そんな立派なの」

投げやりになっている迅和くんを見るのは、新鮮だった。