月が青く染まる夜に

リビングに通しても状況は変わらない。

ちくわは一定の距離を保ちつつ、迅和くんの動線に合わせてポジションを変える。
監視カメラ付きセキュリティーゲート。

とりあえずコートを脱いでリュックを置いた彼は、興味深げにちくわを観察し始めた。

「なるほど。名前の通り、ちくわみたいな模様」

「かわいいでしょー?」

「鉄壁ガードで全部跳ね返ってきそう」

しゃがみ込んで大きな体を小さくして、ちくわをジーッと見つめるも、ぷいっと素っ気なくかわす。
そして、見せつけるように私の足に擦り寄ってきた。

「…確信犯か」

「慣れるとみんなにこうするよ」

「僕に懐く未来は見えない」

早くも心が折れかかっている様子で、笑ってしまった。

「コーヒーがいい?お茶がいい?」

私が尋ねると、「手伝うよ」と迅和くんがキッチンへ踏み込もうとした。瞬間。

「シャーーーッ!」

キッチンの入口で、彼を追い払うちくわ。

「大丈夫。ソファに座ってて。お茶にする?」

「うん。どっちでもいいよ」

手伝うのを諦めた迅和くんが、控えめにソファに腰を下ろすのが見えた。
いつもは私とちくわしかいないのに、彼が来たら急に部屋が狭く感じる。