月が青く染まる夜に

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夜の交差点は、人を迷わせる。

青で進んでいいのか、黄色で迷うのか、赤でちゃんと止まるべきなのか。


駅に向かう歩道で、肩と肩が触れる。
何も言わない。
赤信号で立ち止まり、迅和くんはその光をしっかり目に焼きつけるみたいに上を見ていた。


バッグを肩にかけ直し、マフラーに埋めた顔から白い息を吐く。
手が冷たい。でも、手袋はしたくない。

だって、手を、繋ぎたいから。


交差点の信号の切り替わり。
青が黄色に変わり、すぐに赤へ。
もうすぐこの歩道は青になる。

どうしよう。
まったく酔えてはいないけど、酔ったつもりで、勇気を出すか。

私の手が少しだけ揺れる。
迷いが一拍のためらいを生む。

赤が間もなく青になる────。


私の迷いは、迅和くんからのアクションでかき消された。
先に彼の方から手を繋いできたからだ。

指が、そっと触れて、自然に重なった。

お店で触れていた小指だけのそれとは違う、ちゃんと手と手が繋がる温かさ。

握る力は強くない。でも、離さない。

青に変わって歩き出す。

「手、だいぶ冷えてるね」


彼の視線は信号機に奪われているのか、私には降りてこない。
でも、親指が私の手の甲をなぞる。
たぶん、無意識だろう。

「寒くないよ」

本当は、熱い。

交差点を渡りきったところで、思い切って名前を呼ぶ。

「迅和くん」

「うん」

「このまま、帰る?」

────ほんの少しの沈黙。

この思案している彼の沈黙が、時々怖くなる時がある。
違う気持ちだったらどうしよう、と不安になる。

「僕に選ぶ権利があるのなら」

と、彼の視線はいつの間にか私に向いていた。

「もっと一緒にいたい、かなあ」

夜が、少しだけ深くなる。

「私も」

ぎゅっと、私から手を強く握り返した。