月が青く染まる夜に

塩キャベツをつまみながら、お向かいに座っている若い恋人と思しき男女を眺めた。
ずーっとおしゃべりしている。ずーっと、ずーっと。
時折、目を合わせては肩を寄せ合い、そして見つめ合ったりしていた。

会話はなくても、私と迅和くんの空気は成立する。
それは前からの話なので、あまり気にしていない。

ただ、こうして賑やかなところへ来ると、私たちの温度を測りそうになってしまう自分がいた。

あのふたりみたいに、わかりやすく笑い合えたらいいのに、と一瞬だけ思う。

けれど、会社の蛍光灯の下で並んでいる私たちを思い出すと、胸の奥がきゅっとなる。
あそこであんなふうに目を合わせたら、きっと仕事にならない。


「…ほんとに?」

隣から、小さな声。

思考を読まれたみたいで、肩が揺れる。

「なにが?」

「避けてないって、絶対に言える?」

迅和くんはグラスを持ったまま、視線だけをこちらによこした。

「今日さ、三回くらい話しかけようとしてやめた」

「えっ」

「なんか、忙しそうっていうか…顔、固かった」

────ぐうの音も出ない。

忙しかったのは事実だ。見積りの数字が合わなくて、頭の中は容量オーバーだった。

でも、それだけじゃない。