月が青く染まる夜に

外にいる時、彼を見るとほぼほぼ視線が合わないのは、信号機のせいだ。

LED化だの、系統切替だの、保安協会との協議だの。
私よりなによりも、長く見つめてるんじゃないかと思うくらい彼は信号機を愛している。

「ねぇ、どっちなの?」

少しだけ挑発。
だけど、ほんの少しの不安も混じっている。
なんてめんどくさい女だろう。自分でも呆れる。


迅和くんは一歩近づいてきて、握っていた手を今度は両手で包む。
そして、至極当然のように、

「信号機は、守るもの」

と、真顔で言った。

「系統事故が起きても、停電しても、最後まで動いてほしい設備」

「うん」

「紗菜さんは」

視線が落ちて、また上がる。
夜の照明を吸い込んだ目。

「守りたいとかじゃなくて、一緒にいたい人」

天秤にかけてしまった、自分が恥ずかしい。
彼はおそらく、さっき頑張れなかった自分を挽回すべく、“頑張っている”。

「信号機は僕の仕事で、紗菜さんは、僕の選択」

甘い。
思ったより、ずっと甘い。
言葉にしない人が、ここまで言う。
言わせた自分が恥ずかしい。