月が青く染まる夜に

彼の答えは、言葉じゃなかった。

私の頬に触れる手。
親指が、ほんの少しだけ頬をなぞる。

そして、今度は彼から、ゆっくり、確かめるように、唇が重なる。
さっきの“触れた”だけのキスとは違う。

しっかり留めて、引き寄せる。
でも、荒くない。優しい。
熱を伝えるみたいに、丁寧だった。


足元の石の冷たさと、胸の奥の高鳴りも、彼の指先の圧も、全部がほどけて混ざる。


やがて、ゆっくり離れた。

息が、近い。
白い息は、ひとつになって同時に漏れた。


迅和くんは、好きだとは言わなかった。

────でも、視線が、あまりにも雄弁。

揺れも、迷いもない。
そこにあるのは、隠す気のない感情。
私よりずっと深いところで、燃えているもの。
言葉なんて、いらないくらいの。