月が青く染まる夜に

喉が熱い。
足湯のせいでもない。

噛み合わないというよりも、私がムキになりすぎていて、困らせてしまっている事実にも背けたくなる。
視界が揺れる。


「私はこんなに好きなのに」

────言ってしまった。


夜が、静まる。
湯気がふわりと上がって、私たちの間に薄い膜を作る。

迅和くんは何も言わない。
驚きもしない。
否定もしない。
ただ、見ている。

その静けさが、刺さる。

「なんで私ばっかりこんなに好きなの」

真っ赤であろう顔は、暗いので分からないかもしれない。
もう平常心は失っている。自覚している。

なにもかもこんがらがって、声が震えた。

「なんで私ばっかり頑張らせるの」

本当は、頑張ってほしいわけじゃない。
ただ、同じ熱でいてほしい。それだけなのに。


その衝動のまま。
私は身を乗り出す。

浴衣の袖が、彼の胸元に触れた。

一瞬、迷う。
でももう戻れない。

唇を重ねる。
軽く。ほんの、触れるだけ。

湯気よりも儚い接触だった。


離れた瞬間、現実が押し寄せる。
もう彼の顔なんて見れなかった。

────何してるの、私。

「……最低」

これは、自分に向けた言葉。