月が青く染まる夜に

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懇親会は、研修会場から徒歩数分の大広間だった。


荷物を部屋に置いてすぐに、オフィスカジュアルの服のままで真奈美さんと宴会会場へと急いだ。
なにしろ、意気揚々と先を行く先輩の後ろ姿には「ビール!ビール!」という連呼するコールがうっすら見えるほどだ。


大広間に、お膳がざっと人数分並べられていて、すでに料理も置いてある。
鍋は着火するだけ。ご飯物、汁物などは、これから運ばれてくるのだろう。

忘年会と同じパターンで、すでに席はほとんど埋まっていたけれど、違うのはしっかり私たちの座るスペースがお膳分で確保されていたことだ。


美味しそうな懐石料理を前に、いそいそと腰を下ろすとようやく「乾杯!」の合図。
忘年会の高玉課長と違って、総務部長はあっさりした音頭だった。


瓶ビールの王冠が、次々と外れていく音。

「本日はお疲れさまでした!」

乾杯の声が揃う。
昼間の単線結線図はどこへやら。


今はお刺身の盛り合わせと、揚げたての天ぷらが主役。
私は真奈美さんの隣に座っていた。

迅和は、はるか遠くの列の席に座っている。
同じ空間にいるのに、物理的にも遠すぎて笑えた。

話題は自然と午後の停電シナリオになる。

「燃料契約って盲点だよな」
「うちは拠点多いからなあ」

迅和くんも誰かと真面目に話しているのか、視界の端に入る。
こういう時の人と人とのコミュニケーションは欠かさないんだな、とふと思う。

私たちは一度も目を合わせられなかった。
合わせなかったというより、合わせるのも難しいほど距離がある。