月が青く染まる夜に

「それでは、次は模擬トラブル対応にいきましょうか」

講師の男性が仕切り直しとばかりに、想定シナリオをきちんと準備していた。


“豪雨後、末端系統で電圧降下発生”


主任が聞くか聞かないかのうちに、強めの口調で言う。

「原因を特定しようか」

各チームで、立ったまま議論が始まる。

これがまたきれいに意見が分かれてしまった。
若手は「負荷偏在」、ベテランは「接触不良か母線緩み」という分かれ道。


迅和くんが配線図を見直して、指さす。

「この区間、ケーブル長が長くないですか。電圧降下率、上がります。太径化か、ルート変更が必要かと思いますが」

続けて、もっとも具体的な例を上げてきた。

「信号制御盤が壊れたら、交差点は死にますよ。豪雨後なら地下配管の浸水も疑いますけど」


彼の言葉を受けて、私は別の角度から考えた末、あえて違う提案を出してみた。

「……契約電力の見直しとピークカット制御も併用できませんか?負荷の山を削れれば、設備更新幅を抑えられます」

一瞬、全員が止まる。
技術の話に、コストの話を混ぜたからだろう。

主任があはは、と面白そうに笑った。

「なるほどー。総務の視点だな。悪くない」

真奈美さんも私の隣でうなずいて見せる。
「両方やれば、安定しますよね?」と。

────両方。
更新も、制御も。技術も、予算も。

欲張りだけど、それが一番安全で、誰もが納得してくれるのではなかろうか。
私たち総務部の視点では、この見解で一致していた。