月が青く染まる夜に

「母線の接続部、軽く焼けてますね。トルク管理が甘かったかもしれないですよ」

保全部のベテランがうなる。

「サーモで確認した方がよさそうだねえ」

持参していた赤外線サーモグラフィを当てる。
測定に少しの時間、沈黙が広がる。みんなの視線が集まっている証拠だ。


表示温度、他部より三度高い。
────“三度”。
小さい数字なのに、意味は重い。

私は殴り書きのようなメモを取った。
“接続部温度差あり。増し締め検討。”


ここからは、もう意見の応酬だった。
意見交換ではなく、応酬という言葉しか思い浮かばないような、鋭い指摘が飛ぶ。

若手が口を開く。
「保護継電器の整定、0.8秒から0.6秒に短縮した方がいいのではないですか?」

迅和くんはそれに対し、即答した。

「下流側との保護協調崩れないですかね?下位のMCCBが先に落ちる設計になってるはずです」

その通りだ、とばかりに主任が首を縦に振る。

「選択遮断を守らないと、全停電になるぞ」

…選択遮断。
必要なところだけを落とす仕組みである。

真奈美さんがそこで口を挟む。

「整定変更するなら、影響範囲の資料を総務で作ります。各部署に説明が必要ですから」

こういった技術の判断は、必ず誰かへの説明につながる。
わかった上での彼女の発言だった。

迅和くんがこちらを見る。

「それは助かります。現場だけで決めると、あとで揉めるのは確定事項みたいなものなので」


つまりそれは、責任の話だ。