月が青く染まる夜に


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次は実地研修になるので移動となる。
いったん休憩を挟むことになり、息苦しかった会議室を出て、ロビーの空気を吸いに行く。


一服しに冷えた外に出ていく男性陣が多いなか、ロビーの一角に腰かける迅和くんを見つけて、迷わず「お疲れ様」と声をかけた。

迅和くんは私に気づくとワイシャツの袖を直しながら微笑んだ。

「さっきの説明責任の話、だいぶ効きました」

不意に見せた彼のまくれた袖に気を取られそうになり、慌てて違う違う、と肩をすくめる。

「だって事故後の報告書を書くの、私たちだもん」

立場は違うけど、彼は盤の前に立つ人。私は報告書を書く人。
でも見ているものは同じだ。

止まらない設備。止まらない会社。
会議室の窓の外で、川が流れている。
電気は見えない。

でも、ちゃんと責任は見える。
そして、同じ方向を向いている人も。

「先は長いですねー、今日…」

彼も疲れているのか、はあ、と分かりやすいため息をついていた。
たぶん、彼はこういう議論は苦手とみた。
言葉よりも、動いていたい人だろうから。


そこへ、真奈美さんがやってくる。
「紗菜ちゃん、迅和くん、もう移動するってよ」

研修旅行は、ギリギリに詰め込んでいるため時間に追われる。
慌てて私たちは立ち上がった。