月が青く染まる夜に

通された先には和室の会議室。

畳敷きに長机、ホワイトボード、プロジェクター。
温泉旅館なのに、空気は完全に現場前のそれ。

外では川が流れているのに、室内は戦略の匂いがする。


もうすでに、ホワイトボードには今回のテーマがきれいな字で書かれていた。

『テーマ:老朽化受電設備更新とBCP再設計』

…重い。真奈美さんが弱音を吐くのも分かる。


連理渓の会議室は、畳敷きなのに空気が張っていた。
スクリーンも準備万端とばかりにもう稼働しており、映っているのは単線結線図。

赤で囲われているのが、築二十五年のキュービクル。

「本日の議題は、受電設備更新の優先順位と保護協調の再設計です」

揃ったところで、眼鏡をかけた中年男性の講師の声が落ちる。


私は資料の端に小さく書く。
────更新費概算 二千三百万。
数字は、いつも最初に浮かぶ。

配布された資料に目を通す時間は、そんなに長く確保させてくれない。
ざっと目を通しているうちに、もう現場側の道路交通設備課の人たちがなんとなく小声で相談しているのが見えた。