月が青く染まる夜に

数秒。
とても長い数秒。

迅和くんが、ふっと作業していた手を緩めるのが見えた。

「…五分、休憩しましょう」

それを合図に、現場の緊張がふわりと和む。


張り詰めていた現場がひと時の雑談の場に変わったのを見届けて、私は受変電室を出た。


廊下に出た瞬間、膝がわずかに震えた。

……怖かった。
間違っていたらどうしようと思った。
出しゃばったと思われたらどうしようと。


壁にもたれ、深く息を吸う。
涙が滲む。
大粒の涙じゃない。ただ、じわっと。

安堵と責任が、胸の奥でぐちゃぐちゃに混ざった。

ぽろりとこぼれた涙を拭っていると、同じく廊下に出てきた片桐さんがすぐに私に駆け寄ってきた。

「佐藤さん」

泣いていたのが分かったのか、優しく、でも力強く肩を抱いてくれた。

「いい判断でしたよ。あのままじゃ、きっとなにか起こってしまいそうでした」

肯定されるとさらに泣けてしまって、はい、とだけ返事を返すので精一杯。

「設備は直せます。でも、人は、代わりがききません」

片桐さんは私の背中をさすりながら、全部分かってるよ、という理解の温かさを持ってきた。

私は小さくうなずく。
またこぼれてきた涙を、指先で拭いた。