月が青く染まる夜に

ずっと見てきたからこそ、分かる。
感情の揺れをあまり見せない迅和くんの、ほんの少しの焦りと、苛立ち。
横顔から滲み出ていた。

だめだ、言わないと。
────私が、止めないと。


「迅和くん」

気づいたときには、名前を呼んでいた。


ここにはいなかった彼が、ハッとしたように私の方に顔を向けて感情が戻ってきた。
周囲も、一瞬だけ静まる。

「迅和くん、いったん、五分の休憩入れよう」


その言葉に、誰も反応しなかった。
場の空気を揺らしているのは自分でも分かっている。それでも、これを言わなくちゃいけないのは私だ。

「少しだけ。五分でいいので、休憩入れてください」

もう一度、繰り返した。

「え……、今?」

と、迅和くんが眉を寄せる。
不満そうというより、不思議そうな色を乗せていた。

「工程は把握してます。でも、このままだと判断ミスが出ます」

周りにも人がいるので、あえて私は敬語を使った。
自分でも驚くほど、声が震えている。

「総務判断で、五分止めます」

空気が張りつめる。
迅和くんの目が、まっすぐ私を見た。

怒るかもしれない。
否定されるかもしれない。
呆れるかもしれない。

────嫌われるかもしれない。