月が青く染まる夜に

「時間、だいぶ押してるね」

私の後ろで、ぽつりと片桐さんがつぶやく。
振り返ると彼女はなにか言いたげにこちらを見ていた。
止めないの?という声が聞こえてくる。

私は口を結んで、向き直す。


書類を挟んでいるバインダーは、時間が経つにつれて湿ってきていた。

切替確認、耐圧試験、ケーブル更新部のチェック。
工程が一点に集中する。

迅和くんは立ちっぱなしで指示を出し続けていた。
額に汗が滲んでいるのに、拭こうともしない。
確実に疲れはあるだろうに、表情には絶対に出さない。

私は何度も確認してきた工程表をもう一度見る。
このまま進めば、昼まで休憩なしだ。
休憩なんてとっていたら、どうしようもなくなる。


ここに来て言われてきたたくさんの言葉が蘇る。

『かなり無理すると思います』

『設備より、人を見ていてください』

『僕が大丈夫だと思って組んだので』