月が青く染まる夜に

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停電当日。

まだ夜と朝の境目みたいな時間に、仕事が始まる。
受変電室は独特の匂いがする。
金属と埃と、少しだけ油の匂い。

────三時半。外は真っ暗だ。


私もこの案件の担当なので、立ち会いのため来ていた。
もちろん、片桐さんもいる。

これが終われば、だいぶ仕事がひと段落する。

迅和くんの声が、いつもより低く響く。

「主遮断器、開放準備します」

機械音が重なり、フロアの灯りが一斉に落ちた。

本社ビルが、静かになる。
人はちゃんといるのに、なにもない世界みたい。

少し経ってから、非常用発電機が唸りを上げて重要系統だけが生き残る。


工程は順調だった。
予定通り進むと誰もが思っていた。

七時を回った頃、どこかから声が聞こえた。

「絶縁値、想定よりだいぶ低いですー!」

作業中の協力会社の、現場の声。
その声で空気が一変した。

迅和くんがすぐに作業中の測定箇所へ移動する。

私も急いでそちらへ向かった。
ちょうど彼が測定器を受け取り、自分で再確認しているところだった。

「再測定します」

真剣な表情で作業しているその横顔を、私はただただ見つめるしかできない。