12人と私のハチャメチャ寮生活! ➊輝石の寮の12人のジュエル達

ううっ。頭痛がするし、目眩もする。なぜこんな事になったか。それは……。

「転校生を紹介します、天石さんです」

「天石咲希です。訳あってこの中学に転校する事になりました。よろしくお願いします」

一瞬の沈黙。あれ、やっちゃった?

「よろしくね天石さん!今日の休み時間遊ぼ〜」

「ねえねえ、どこから転校してきたの?」

「好きな動物って何?」

色々と質問攻めにされた私。先生は、「はいはい、みんな、天石さん困ってるわよ!離れて離れて!あ、先生職員室行ってくるわ」と教室を去った。すると、ザ・女王って感じの強気な女の子が現れた。

「ねえ、あんた、地味じゃない?オドオドしてるし、メガネがダサいし、女子力なーい。皆んな、よくこんなモブキャラと接するわね」

ご、ごめんなさい。

「で、でもこの子すごく性格良いし」

女子の一人が私をフォローしてくれる。

「は?私よりあんな地味子ちゃんがお好き?退学させるわよ」

そうしたら、フォローした女子は一気に青白い顔になり、すみません!という風に女王にお辞儀する。

「今日の休み時間は、裏庭に来て」

呼び出しか…。暴力を振るわれる事なんて分かっていた。でも、私は別に喧嘩は苦手じゃない。

「いいよ」

と私は承知する。女王はにやりと口角を上げた。


授業中も女王がこっちをチラチラ見てくる。なぜか興奮してしまった私は、女王の方を見て、笑った。



授業終了後の休み時間は、他クラスの生徒も他の教室に入って良い事になっているらしく、大賑わいだった。

裏庭に着き、周囲を見渡す。女王とその取り巻き達がいた。

女王の取り巻きの側近が、声を上げた。

「あの野暮ったい子いた!」

「ああ、来たのね。あんたは転校初日で皆んなに好かれてる。更には男子もね。なぜよ、なんで⁉︎」

何で?こっちが聞きたいです!

「分からない」

「ふうん。……二度と男子に顔見せできない様にしてあげるわ」

始まった。取り巻き達が私をものすごい形相で睨んでくる。

そこに、ある男子がやってきた。名前は知らない。男子には興味ゼロだから。

女王は途端に甘い目つきになり、その男子に近づく。

「こんにちは〜、ダイヤモンド様♡」

「……」

女王が近づいても男子は無言。スタスタと歩くその方向は、私ィ⁈

「君って天石咲希?」

「まぁ、そうですけど」

男子は一呼吸してから、女王に向き直る。

「あんた」

「はい♡」

「天石の事、虐めてただろ」

「いえいえ、全く!むしろ、彼女には優しくしてたぐらいです。裏庭でお喋りしてて」

ねぇ、と言う風に女王は私を見る。ぎこちなく首を縦にした私だったけど。

「お前、嘘つくな。顔に書いてある。……咲希、行くぞ」

グイグイ手首を引っ張る彼。いつもなら男子と聞けば警戒するんだけど、彼にはなぜか抗えなかった。体が少し安心していたから。

「転校生、一生覚えてなさいよ」

ギロリと女王は私を睨みつけたが、そんなの彼は気にせずに、前へ前へと進んでいった。

キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴る。あ、そうだった、ここ、裏庭で、今、休み時間が終わったんだった!

「……大丈夫だったか」

「はい、大丈夫です。あの、助けて下さり、ありがとうございます、ダイヤモンドさん。ところで、貴方って、誰ですか」

「growのメンバー」

「grow?何ですか、それ?」

「クラスの奴に聞いてみて」

なんていう会話をして、私達は別れた。って!同じクラスじゃん、全然気づかなかった。

「あの、ちょっといい?」

早速聞いてみた。

「growってどういうグループなの?」

「し、知らないの⁉︎あ、そっか。転校してきたばかりだもんね。growっていうのは!」

いきなり声が大きくなった⁉︎

「私達も正直言ってよく分かんないよ。でも、モテ集団って事は皆んな知ってるの。顔面偏差値がエグいんだよ!それに個性が強すぎるし!女嫌いのクール系とか、紳士的なおぼっちゃまとか、チャラいけど憎めないオシャレさんとかね。暴走族っていうウワサもあるし、アイドルグループっていうウワサもあるの」

へ、へぇ……。とにかくすごいっていうグループなのは分かった。

「えっと、生徒会だったりする?」

「ううん。虹美中の生徒会なんて、本当にハイリスクな男子ばっかりなんだよ。おかげで崩壊寸前。あーあ、growが生徒会だったらいいのになぁ」

『ザッ』

誰?背中に冷や汗が流れる。もしかして、生徒会の皆さんだったりして。

「俺達生徒会、『darkness』は、生徒会に刃向かう者を排除する。口答えするな」

生徒会、生徒会長、じゃん!予想は悲しいことに当たってしまった。

「いた」

何が、いた?

「天石咲希は、この2年B組にいる。つまり、君だ」

すっと私を指さした生徒会長さん。

「天石は、この生徒会の女だ」

「そんな覚えはないです」

にやりと口角をあげ、生徒会長さんは言った。

「お前に反抗する権利はない」

「……誰が決めましたか?クラスのみんなが怯えてます、帰って下さい」

「帰ってって言われて帰ると思うか?来い」

強引に腕を引かれた。

「キャァァ!growよ!しかも全員!めちゃレア」

女子達はdarknessの事などあまり気にしていない様子で、growに夢中だっ。

ダイヤモンドさんはツカツカと生徒会に歩み寄る。

「darkness、やめろ。咲希が嫌がってる」

「はぁ?やめるわけないだろ!てめぇやんのか」

「ご期待に応えて」

や、やり合いが始まるよっ。

「み、みん、な!安全なところに避難して」

「うん!」

両者とも、睨み合う。そして、いよいよ始まった。

「咲希は、darknessのもんだ!growにやられる訳にはいかねえんだ」

「darkness、ああ、あの生徒会のやつか。悪いけど、咲希は、growの『姫』だから」

二人とも本気だ。結果は、ダイヤモンドさんの圧勝だ。す、すごい!

「ちっ、まだ、俺は諦めてねえからな!」

何を???

「咲希。心配した」

「あ、ありがとうございます!何を諦めてないんですか、会長さんは?」

「ん?ああそうか、咲希って無自覚で鈍感なんだよな、分からないに決まってるか」

私が、無自覚で、鈍感……⁈自分がめちゃくちゃ変だって事は知ってますが?というふうに悩んでいると、先生が教室に入ってきた。「何ですかこの騒ぎは!校長に言いつけますよ」

「父、校長は俺らがこういうグループだってのは知ってる。わざわざ言わなくていい」

威圧感に押された先生は、「ひ、すみません。じゃあ授業始めるね」と怖気付く。

次は数学だ。あんまり得意じゃなんだけど……。

「えー、皆さん。転校生のお嬢様もいらっしゃるので、もう一度ご挨拶をします。数学担任の荏原です。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

私は自分のペンを持とうとする。あ、あれ。ない、しまったはずなのに。

近くの女の子達がクスクス笑う。あの子達が隠したんだろうな。

「私のペン、返してね」

自分でも驚くくらい、穏やかだけど冷徹な声が出る。

「う、うん」

でも、まだ続きそうだよね。人気者の男子に誰かがチヤホヤされてたら、虐めたくなるらしい。私にはさっぱり分からないけど。

「これは難問です。解る人いますか?」

うーん。図に整理して考えてみる。……解った。

「はい」

私が手を挙げると、みんなが眉をひそめる。「え、マジで?」「自分はこんなに良くできるのって言いたいんじゃない?」

「●●です」

「正解です。どうやって考えましたか」

「えっと、こうして……」

先生はフリーズし、「よろしい」と呟いて次の問題を書き始めた。




帰りは雨だった。緊張のせいで足どりも気持ちも重くなっていたが、無事に家に帰れた。

「——ただいま」

「おかえり、咲希。学校、友達できた?」

「全くできなかった。みんな、有名な企業の令息や令嬢だったの。セレブ学園」

お母さんはふふっと笑い、パンフレットをチラリと見る。

「そういえば、煌輝学園って全寮制だったわよね。咲希はどうなるのかしら」

「分からない。男子も女子もグループに分かれてて、それぞれのグループで生活するみたい。明日、先生に聞いてくる。……聞いてみる」

「頑張ってね。咲希は、いいところいっぱいあるから、きっと友達が寄ってきてくれると思う」