「わ、美味し…そ……う………?」
のに失敗した。
冷蔵庫から取り出したはずのチョコは、なぜか焦げくさい匂いがした。
もはやある種の才能かもしれない。
「えー、嘘だあー…」
私の1番の被害者であろう兎仁くんは、ため息とともに悲しげな言葉を吐いた。
だって、私が手伝った箇所って全部兎仁くんと一緒にやったところだもんね…。
今度は絶対失敗しないだろうなって私も思った。
「…ほんとーにすごいね、萌那……」
「これでも私にしては大成功だよ…はは……」
私ひとりじゃ、混ぜるまでにチョコが全部なくなって、完成すらしてなかったと思う。
だから、これはある意味大成功。
そう話すと、兎仁くんは小さく笑い声を立てた。
「それって、萌那の手作りチョコを食べられるのは、世界で僕だけってこと?」
「まぁ…、そうなるかな」
だって、私に手作りチョコを完成させられる人は兎仁くんしかいないから。
頷いた私に、兎仁くんは満足そうな表情を浮かべた。
兎仁くんが私に向けてくれる感情はとろりと溶けた、チョコレートみたいだ。
甘くて、優しくて、身動きができない。
「いただきまーす」
兎仁くんは目の前にあった不格好な塊をひとつ、口に入れた。
一切迷いのない動作。それが、嬉しくて仕方ない。
「ん、おいしー!ブラウニーみたいになってる」
顔を少ししかめながらも、兎仁くんは頬を緩める。
それは美味しい…のか?
「はい、萌那も。あーん」
兎仁くんが食べさせてくれたそれは、何とも言えない味がした。
「苦い…けど甘いような…?」
苦いし、なぜか焦げてるけど、少しだけ甘い。
それはきっと、兎仁くんとだから。
「萌那の不器用なとこも、かわいーよ」
今日の兎仁くんはトニカクかわいくて、チョコよりも甘かった。
#本命チョコ
ーfinー



