「ふーん。萌那が世界壊せそーってくらい、不器用だったってことね」
私の話を聞き終えた兎仁くんは、つまらなそうに息を吐く。
ごめんなさいね、不器用で。
「はい私が不器用を司る神ですごめんなさい」
「あはっ、誰もそこまでは言ってないでしょ〜?」
いいや、言ったね。
何なら兎仁くんの方が酷かったね。
ウインクで可愛く誤魔化そうとしたって、騙されないんだから。
…悪いのは私なんだけど。
「チョコ、用意できなくてごめんね…」
「別にいいよーだ、気にしてないもーん」
素直に謝る私に、兎仁くんはプイッと外を向く。
…めっちゃ気にしてない?
強がって平気なフリをしてくれたのかもしれないけど、残念そうにしてるのが見え見えだ。
ますます申し訳ない。
「本当にごめんね、バレンタインなのに…」
「萌那が不器用なだけなんでしょ…?」
何度か謝罪しているうちに、ようやく兎仁くんはこっちを振り向いてくれた。
よかった、許してくれ──
「うん。私のせいだよ…」
「そーだよ、萌那! 好きな子からのチョコはいくつあっても足りないんだよ!?」
てなかった。
寧ろ、さっきより重症かもしれない。
「なのに0個って…うー……」
「わああああごめん!! ごめんね、兎仁くん」
ほら! 泣き始めちゃったし!!
これどうしたらいいの?
さらに焦る私とは裏腹に、兎仁くんの頬を大粒の涙が流れていく。
「……萌那は悪くないけど、萌那がわるーい」
「えーーっと…?」
それはどっちだ…?
「あーあ、萌那の作るチョコ、食べてみたかったのにー…」
戸惑う私に、兎仁くんのトドメの一撃が心に突き刺さる。
うっ……。
残念そうな表情も可愛い分、余計に罪悪感が…。
爆散したカカオ豆の破片も、持ってきたなら兎仁くんは喜んでくれた?
それも萌那らしいねって笑ってくれた?
きっと、その両方だ。
…そうだよね、だって兎仁くんだもん。
「ごめ、ごめん…」
私のどんな不格好な姿にだって、真っ直ぐな好きをくれた兎仁くんを信じ切れなかった。
その事実がグサリと重くて。
さっきまで兎仁くんが泣いてたのに、今度は私が泣きそうだ。
「ねーえ、萌那? 今日の放課後空いてる?」
「空いてるけど…」
「チョコ作り、リベンジして」
…………ん?
聞き間違いかな。
いや、でも確かに聞こえた。
「む、無理無理!」
だって、次も失敗する自信しかないのに。
「僕と一緒にリベンジして、萌那?」
なのに、甘えるようなそのお願いを断ることは今日の私にもできなかった。



