ハルトのレシピ。

ハルトの父、ユウイチが作れる料理は、おにぎりだけだった。
それも「具なし」。塩の加減はいつも同じで、失敗もしない代わりに、進歩もない。

四十歳。都内の会社に勤める、ごく普通のサラリーマン。
一人暮らしの部屋は静かで、冷蔵庫の中身も静かだった。

その日、ハルトの母が事故で亡くなったことですべてを変えた。

葬儀、役所の手続き、親族との話し合い。
数週間後、ハルトはユウイチの部屋に来た。

ランドセルと、小さなスーツケースひとつだけで。