わたしの秘密のキューピット


「すごいね、紗良。連絡先を交換したって聞いたときもかなりびっくりしたけど、紗良が誰にも相談せずに、一人でそこまで行動できたことにびっくりだよ」

 たしかにそうだ。

 バレンタインデーまではずっと、高橋くんのことを見つめるだけの片想いをしていたのに。

 バレンタインデーのときだって、直接渡す勇気がなくて、机の中にクッキーだけ入れて逃げ出したのに。

 小春に相談もせずに、高橋くんとの距離を縮められたことが自分でも信じられない。

 でも、わたしはちゃんと勇気を出して、両想いになれたんだ。頑張って行動してよかったと思ってる。

 昨日の放課後高橋くんと一緒に下校したこと、寝る前までメッセージを送りあっていたこと、今日も一緒に帰る約束をしたことをニヤニヤしながら話すと、「いいなぁ、彼氏」と小春に本気で羨ましがられた。

「いいでしょ」

 ニヤケながらそうつぶやいて、ふと妙な違和感に気付く。

 つい最近まで、学校にいると朝一番にわたしに話しかけてくる誰かがいなかったっけ? 

 わたしはその子に、今の話をして「いいでしょ」って笑うつもりだった気がするのに。

 その子が誰かも。その誰かが本当にいたのかも、なんだか曖昧で、うまく思い出せない。

 小春に話したら「幸せボケ?」と呆れられて。

 わたしはそれ以上、深く考えることはやめてしまった。