わたしの秘密のキューピット


 次の朝。

 いつもどおりに目覚めたはずなのに、わたしの頭はなんだかすっきりしなかった。

 内容はよく覚えていないけれど、明け方見た夢にかわいい女の子が出てきた。

 顔も名前も知らない子だったけど、明るくて笑顔のかわいいその子に、わたしはとても良い印象を持っていた。

 もっともっと話したい。その子と一緒に過ごしていたい。

 そう思ったら目が覚めた。

 悪い夢じゃなかった。すごく楽しい夢だった。

 それなのに、なんだか寝覚めが悪くて、頭が重くてぼんやりとしている。

「紗良ー! 早く起きてこないと遅刻するわよー!」

 起きてから長い時間、ベッドの上でぼーっとしていたら、お母さんの怒鳴り声が聞こえてきた。

 ヤバい、ヤバい……。

 慌てて起き上がって、制服に着替える。

 カバンとスマホを持って部屋を出ようとして、ふとスマホのメッセージに気付く。

 開いてみると、高橋くんから「おはよう」のメッセージが届いていて。遅刻しそうなのに、朝から照れた。

 わたし、昨日の放課後、高橋くんと両想いになったんだ。

 今もまだ夢みたいだけど、朝一番で届いた高橋くんからのメッセージがわたしをしあわせな気持ちにしてくれる。

 学校に行ったら報告しなきゃ。

 ニンマリと笑ってカバンにスマホを入れながら、「あれ?」と思う。

 たった今、あたりまえみたいに報告しなきゃって思ったけど……。

 誰に何を報告するんだっけ。

 今朝は目覚めた瞬間から、なにかとても大事なことを忘れているような気がする。

 それなのに頭にモヤがかかっているようで、何を忘れているのかわからない。

「紗良ー! 何してるのー?」

 考えていたら、今度はさっきよりも大きなお母さんの怒鳴り声が聞こえてきた。

 これは、本格的にまずい。

「はーい、すぐ行く」

 わたしは部屋のドアを開けると、家の階段を駆け降りた。