わたしの秘密のキューピット


「ん? これ、なんて読むんだろ」

 ところどころ、解読不可能な単語がある。

 高橋くんの書き癖なのか、小文字のaの上の部分がきちんと閉じられていないことが多くて、aとuの区別が付きづらい。

「あれ、これってどういう意味の単語なんだろ」

 ノートに記された見覚えのない綴りの英単語に首をひねっていると、ギギーッと椅子を引きずる音が近づいてきた。

「それ、teacherって書いたつもり。おれの書いたaとuが区別付かないってよく注意されるんだよね……ごめん、ノート書くとか言ったのに字汚くて」

 横を向くと、高橋くんが申し訳なさそうにしていてドキッとした。


「ご、ごめん。そんなつもりで言ったんじゃなくて……」
「いいよ、いいよ。今さらだけど、もっと字がきれいな人にノート頼んだほうがよかったかな。武部さん、字きれいだもんね」
「そんなことないよ」
「いや、きれいだよ。一年の初め頃に、武部さんがおれにクッキーたじゃん? テストで消しゴム貸したお礼だ、って。そのときに入ってた手紙の字がきれいだったから、なんか印象に残ってる」

 高橋くんが、思い出したように、ふっと笑う。それを聞いて、わたしはちょっと驚いていた。