わたしの秘密のキューピット


「武部さん、これ英語のノート。次は数学貸して」

 一時間目の授業のあと、高橋くんがギギーッと椅子を引きずってわたしのほうに近寄ってきた。

「あ、ありがとう……! これ、お願いします」
 
 英語のノートを受け取って、代わりに机から取り出した数学のノートを両手で献上するみたいに差し出すと、高橋くんが「了解」と爽やかに微笑んだ。

 昨日の放課後約束したとおり、高橋くんは一時間目からわたしためにノートをとってくれている。

 うれしいような申し訳ないような……とても複雑な気持ちだけど……

 高橋くんのほうから自然に話しかけてもらえるから、やっぱりうれしいかも。

 返してもらった英語のノートの表紙をしばらく眺めてから、ページを開く。

 書いてもらったページを確認してたら、わたしと高橋くんのやりとりをニヤニヤと眺めていたユーコが興味津々に横から覗き込んできた。

「ふふ、朝からいい感じだね。紗良ちゃん……、って……。あれ、予想に反して字が汚いね……」

 高橋くんの字を見たユーコが、眉根を寄せてつぶやく。

「そうかな」

 わたしはノートに視線を落として、首を傾げた。

 たしかに高橋くんが書いてくれた字はそんなに綺麗じゃない。

 ざ・男の子の字! って感じ。

 だけど、小五の弟の字もこんなもんだ。別に読めないわけじゃない……と、思ったけど。