わたしの秘密のキューピット


 利き手じゃないほうの手で字を書くのって難しい。

 右手首に全治二週間のケガをしてしまったわたしは、授業中にノートをとるのにかなり苦戦していた。

 教科によっては全然ノートをとらないこともあるし、社会とかは先生が用意してくれている穴埋めプリントに文字を埋めていくだけだからまだラクなんだけど……。

 英語と国語が大変。

 数学も問題をノートに解けって言われると時間がかかる。

 しかも、今は単元がちょうど図形のところだから、先生が黒板に描いた図を同じようにノートに写すのも結構やっかい。

 包帯を巻いた右手で定規を押さえながら左手で線を引くのだけど……。

 ズレてしまってうまくいかない。

 午前中はまだ左手で頑張ったけど、昼休みを挟んで五時間目の授業が始まる頃にはさすがに疲れていた。

「紗良ちゃん、字がミミズ」

 私のノートを横から覗き込んで、ユーコがふふふっと笑っている。

「仕方ないじゃん……」そう言おうとして、わたしはあわてて言葉を飲み込んだ。