バレンタインデーの翌日。
学校に行くと、高橋くんと前田さんが黒板の前でふたりで話をしていた。
楽しそうに話す二人の距離は近い。
相変わらず仲良しだなー。
高橋くんと自然に話ができる前田さんのことを羨ましく思いながら、机の上に両肘をつく。
組んだ両手の上に顎をのせて盛大にため息をついていると、「おはよう」と後ろから声をかけられた。
振り向かなくてもわかる。たぶん、親友の小春だ。
「おはよう」
「どうしたの? 朝から暗い顔して」
そう言われて、わたしの口からまたため息がこぼれる。
「明るくするほうがムリだよ。朝からあんなの見せつけられてるんだもん」
「あんなの、って?」
「高橋くんと前田さん。朝からすっごく仲いいよね。やっぱり付き合ってるのかなー。あのふたり」
前田さんと笑い合う高橋くんの顔を見つめてぼやく。
「それは違うと思うよ」
「どうしてそう思うのか? 前田さん、高橋くんにチョコ渡してたんだよ。本命っぽいやつ」
暗い表情で振り向いたわたしは、次の瞬間、固まった。
てっきり親友の小春に話しかけられていると思ったら、そこにいたのが昨日の放課後に出会ったユーコだったからだ。
「どうして、ここにいるの?」
「やだなー、昨日別れるときに言ったじゃない。また明日ね、って」
顔を引きつらせるわたしに、ユーコがにこにこと笑いかけてくる。
中学のセーラー服を着たユーコは、ちょっと派手で大人っぽいけれど、見た目は普通の女子中学生だ。
わたしの机の前で、ふわふわと床から三十センチ浮いていることを除いては。
「あれ、夢じゃなかったんだ……」
嬉しそうに笑っているユーコに向かって、ボソリとつぶやく。



