……こいつはどの部屋に入るのにも躊躇せず、ものを大切に扱う心は欠落しており、そのうえ礼儀やマナーの欠片もない人間なんだな。
もしかして、学生証は持ち主の非情な扱いにうんざりして逃亡したんじゃないか? その説が有力だと思うぞ。
「おう、水瀬。お前、なにしに来たんだ? あと、入室ルールは守れと言ったが」
「生活指導のおっちゃん――じゃない、先生! やっほー元気?」
「今なんつった? 俺はまだ四十代なんだがな」
「三十路超えて四十路! その年でカツラってことは老けてるじゃん!」
「……おい、俺にそんなこと言っていいのか?」
「ごめんて! そういえば、俺の学生証なくなったんだけど知らない?」
「知らん! 敬語は使えない、ものの管理もできないとは、それでも風紀委員か!?」
ちなみに俺は話を聞きながらとある一点に注目していた。
なにを隠そう、……カツラである。



