……「ぐえっ」とかなんとか、踏まれたラバーチキン(別名びっくりチキン、あの黄色くて面白いおもちゃのことだ)のような音は、幻聴だろう。
しばらく様子をうかがっていると、さっきの疑問に対する答えのようなものが聞こえてきた。
さっきのは女子の声だったが、次は男子の声である。
「……あー、砲丸投げの玉が落ちたんじゃない? あれ、よく落ちてたでしょ」
なんでだよ! 俺の声って鉄球が落ちた音と似ているってことか?
「なあ悠、ここの陸上部って砲丸投げしてたっけ?」
「多分してない。それより静かにしろ」
水瀬を黙らせて耳をすませてみると、なにやら音が聞こえてきた。かすかにだからなんの音か特定はできなさそうだ。
「……見ちゃお」
「おい」
我慢よりも好奇心が勝った水瀬が、棚の陰から顔を出す。見られたらどうすんだ馬鹿!
だが、俺も気になってたっちゃ気になっていたので、水瀬の上から顔を出した。


