贄と呼ばれた少女の、幸せ


「よし、じゃあ名前を決めよう! 希望はある?」

「考えたことがなくて、どういう名前がちゃんとしてるか、わかりません」

「……じゃあ俺が決めていい?」

「はい。つけてもらえたら、うれしいです」

 ヒースクリフは心に込み上げる色々なものを飲み込んで、やっぱちょっとは似た音があるほうがいいよなあ……とぶつぶつ言いながら名前を考え始める。

「にーにーにー……ニナ! ニナはどうかな?」

「……私の、名前」

「うん、どう?」

「ニナ、ニナです。私の名前は、ニナです」

 少女は、ニナは頬を赤らめて、宝物を与えられたかのように『ニナ』と繰り返す。

「ありがとうございます……! 私の名前は、ニナです」

 ニナは目を輝かせてとけるように微笑んだ。

「こんなことある……? なんかもうおいしいものいっぱい食べさせたい……」

 ヒースクリフはちょっと泣きそうになって、また両手で顔を覆い天を仰いだ。