「違うよ?!火鷹の良いところが見つからないわけじゃなくて!」
「もういいよ。」
諦めたようにそう言う火鷹。
明らかに雰囲気が悪くなってしまい、気まずい。
わたしは話を変えようと「あ、そういえば、お腹の傷は?良くなった?」と訊いた。
火鷹はまだ不機嫌そうな表情を浮かべたまま、「···まだ治ってない。」とぶっきら棒に答えた。
「え、本当?あんまり薬効かなかった?ちょっと、傷見せて。」
わたしがそう言うと、火鷹は黙ってTシャツを脱いだ。
引き締まった体付きに六つに割れた腹筋。
わたしが以前巻いた包帯は既に外されており、左腹部にあった傷は塞がりだいぶ薄くなっていた。
「大丈夫そうだよ?傷痕もだいぶ薄くなってるし。」
「いや、まだ治ってない。」
「これくらいなら、もう処置しなくても自然治癒するから。」
わたしがそう言うと、火鷹はわたしの手を取り、自分の腹部にある傷痕にわたしの手を当てさせた。
「えっ、何?」
わたしは火鷹の行動に驚き、火鷹の顔を見上げた。
火鷹は真剣な表情を浮かべており、わたしを真っ直ぐに見つめていた。
「···火鷹?」
「キス一回じゃ足りなかった。」
「え、えっ?」
「キス一回じゃ、治らなかった。」
「えっ?じゃあ···もう一回、必要ってこと?」
恥ずかしながらも、わたしは火鷹にそう訊いた。
すると火鷹は真剣な表情を崩す事なく、わたしを見つめたまま「キスだけじゃ足りない。」と答えた。
キスだけじゃ足りない···――――
それって、つまり······
「キスの続き、しないか?」
火鷹の口から出てきた思いも寄らぬ言葉に、わたしは身体が奥底からジワジワと熱くなっていくのを感じた。
火鷹はわたしとの距離を詰めると、そっと顔を寄せてきた。
「無理にとは言わない。夏菜が嫌じゃなければ、俺は···夏菜を抱きたい。」
緊張から火照る顔に、乾いてくる唇。
わたしは緊張から荒くなる吐息を火鷹にバレないよう必死に抑えようとした。
「···嫌じゃ、ないよ?でも······」
「でも?」
「わたしの身体···、穢れてるから······」
「何言ってんだよ。」
「本当なの。わたし···、自分の身体を売ってた時期があるから。そんな穢れた身体を、火鷹に見られたくないよ······」
わたしはそう言い、自分の情けなさから俯いた。
しかし火鷹は、優しく「夏菜?俺の顔見て。」と言い、わたしはゆっくりと顔を上げると、火鷹の瞳を見つめた。



