パパとはんきゅー

 12月の今日は、私の5歳の誕生日。
 お外はとっても寒いけど、幼稚園のお迎えには、珍しくパパが来た。
 パパは私の誕生日を祝うために、「はんきゅー」というのを使ったんだって。
 パパと手を繋いで家に帰ったら、玄関に知らない靴があった。
 きっと、パパが新しく買ったんだろうな。

「手を洗っておいで。うがいも忘れちゃダメだよ」
「はーい」
 洗面所に行くと、なんだか鼻の奥がツンとした。
 ヤバイ、風邪ひいちゃったかも?

「本当はママと一緒にお祝いしたかったんだけどね。ママは急な用事で出かけちゃったから、パパと二人でお祝いしよう。ケーキも、ちゃんと準備してあるからね」
 パパはそう言って、テーブルに豪華なごちそうをたくさん並べてくれた。

「こんなに食べられないよ」
 オムライスにハンバーグ、唐揚げ、サラダ。
 卵焼きやサーモンのカルパッチョ、冷凍食品のグラタンまで……いくらなんでも、多すぎだよ!

「ごめん、張り切りすぎちゃった。無理しないで、食べられる分だけ食べてくれたらいいよ」
 パパが優しく笑った、そのときだった。

 ――ドン、ドン。
 キッチンのほうから音が聞こえた。

 私はびっくりして、食事の手を止める。

「いまの音、なあに?」
「最近、冷蔵庫の調子が悪いんだよ。古いから、中で氷が崩れる音がするんだ。気にしなくていいよ」
 パパは笑顔のまま、テレビのリモコンを手に取ってボリュームを大きくした。

「ふーん?」
 でも、さっきの音は、本当に氷が崩れる音だったのかな?
 なんか、ドアを叩くような音だったけど。