きらきらでかわいいまっしろ

「それならさ」
 
 気がつけば私は、翠ちゃんの拳を握り、安心させるように彼女の目を見つめた。

「私たちでその白い影について調べてみようよ。実里ちゃんのことが心配なんだよね?」

「う、うん。でも……」

 私の提案に、翠ちゃんはもともと大きくて丸い目を膨らませた後、瞳を伏せながら目を泳がせた。口元は逡巡するようにすぼめられて、彼女の心に迷いがあることが窺えた。
 だから私は、「大丈夫だよ」と彼女の背中を押す。

「一人じゃ難しいかもしれないけど、三人ならできるかもしれないじゃない?」

 私が「三人」と言ったところで、はーちゃん先生が「私も?」と自分を指さした。

「いいですよね、はーちゃん先生。ほら、三人寄ればナントカって言うじゃん」

「三人寄れば文殊の知恵、ね」

「そうそうそれです! 大人がいたほうが安心だし」

 私の安直な発言に対して、翠ちゃんが遠慮がちにはーちゃん先生を見つめる。

「でも、はーちゃん先生はいいの? お仕事もあるのに」

 私よりも随分と大人な気遣いを見せる翠ちゃんに、ドキリと心臓が鳴った。

「そうねえ、まあ仕事はあるけど比較的自由だから、大丈夫よ。それに茉白ちゃんが言うように、大人がついていたほうがいいでしょうしね。私も白い影や浦田先生の言葉の意味が気になっていたから、謎を解いてみたいわ」

 どうやら先生にとって、翠ちゃんの悩みを解決するのはミステリーを解くのと同じらしい。他人の恐怖体験を娯楽と考えるのはまあどうかとも思ったが、誘ったのは私なので文句は言えない。

「ありがとうございます! めちゃくちゃ心強いです」

 翠ちゃんの表情がほっと和らぎ、ようやく安堵が垣間見えた。
 良かった。連弾のパートナーとして翠ちゃんの元気がないのは、私も悲しい。翠ちゃんにはなんとかして元気になってほしいし、友達の実里ちゃんも無事でいてほしい。

「そうと決まれば早速調査ね。と言っても、何から始めたらいいのかしら」

 はーちゃん先生が首を捻る。ピアノのレッスンの時間は残り三十分に迫っていた。今日は全然ピアノに触れていないけれど、私も翠ちゃんも不満はない。お母さんに聞かれたら、ちゃんとレッスンをしたということにしなくちゃ。

「翠ちゃん、実里ちゃんの家で白い影を見たって言ったよね。どうしてそんなものを見たのか、心当たりはない?」

「心当たりかぁ……」

 翠ちゃんは悶々と考え込む。突然の怪異に「心当たりがないか」と聞かれても何も思い浮かばないだろう——と私自身も答えが出てくるのを諦めていたのだが。
 
「そういえば、きっかけか分からないんですけど、実里ちゃん、交換ノートを貸した時、『こういうの初めてだから嬉しい』って喜んでました」

「初めて? 交換ノートをするのがってこと?」

「いや、話を聞いたらちょっと違うみたいで。交換ノートが初めてという意味じゃなくて、“平成女児グッズで楽しむこと”自体が初めてだったらしいんです」