きらきらでかわいいまっしろ

「“まっしろ”だと何が大丈夫なのかも分からないわね。本当にどういうことなのかしら。先生はそれ以上は何も言ってくれなかったの?」

「はい……どういうことなのか、聞いても教えてくれなかったです。ただずっと、にこにこ笑いながら“だいじょうぶですよ”って繰り返すんですよ。なんか、その時の先生はわたしが知ってる浦田先生じゃないみたいでした。“だいじょうぶです、まっしろになったから”って、まるでロボットみたいに繰り返してて……。先生に、おかしなものが取り憑いたんだと思って、わたしは先生の前からも逃げました」

「そりゃ、逃げるよね……信頼できると思ってた人がおかしくなっちゃったんだもん」

 翠ちゃんは「おかしなものが取り憑いた」と表現したが、もっとつっこんで言うと、「幽霊が取り憑いた」ということだろう。あえてその確信的な言葉を口にしなかったのはもちろん、こわいからだ。

「その後、先生の様子はどうだったの?」
 
 はーちゃん先生の質問に、翠ちゃんは「ちょっと変でした」と答える。

「昼休みの後の五時間目の授業自体は、いつも通りでした。でも、時々先生と目が合った時に、すっと真顔になるのがこわかったです……。しかも、いつもより目が合う回数が多い気がしました。なんだか、わたしだけ監視されている(・・・・・・・)ようで……。きっと気のせいだって分かってるんです。先生のことを一度こわいと思っちゃったから、たぶんこわいことばかり想像しちゃうんだって」

 翠ちゃんの怯えようは、側から見ていて可哀想なぐらい激しかった。それほどこわい経験をしたんだろう。もし私が翠ちゃんと同じことを体験したら、やっぱり同じように震えていただろう。

「他の子はどうだったんだろう? 先生の様子が変だと感じた人はいるのかな?」

「いや……たぶん、いないと思います。誰も授業後に浦田先生がおかしいと言っている人はいませんでした」

「そうか。それなら余計こわいね」

 原因は分からないけれど、実里ちゃんが学校に来なくなり、先生が意味深な発言をした。それだけで十分恐ろしいのに、周りの誰にも分かってもらえないなんて。きっと一人で抱え込むには重すぎる経験だっただろう。
 学校が終わり、ピアノの時間まで翠ちゃんの気持ちは沈んだままだったのも納得がいく。 
 
「実里ちゃんはこのまま、学校に来ないのかな……。それにあの白い影はなんだったんだろう。いろいろ考えてると昨日はよく眠れなくて……。お母さんにもお父さんにも、お兄ちゃんにも何も話せないし」

 家族に話せないという翠ちゃんの気持ちはよく分かる。自分でも訳のわからない現象に遭遇して、家族にうまく説明ができないと感じているんだろう。
 翠ちゃんが膝の上でぎゅっと拳を握りしめたのが見えた。